英語に敬語はないと誤解されることがしばしばありますが、英語にも敬語はもちろんあります。
でも、日本語に比べれば「ない」と言える場合もあるのも事実です。
ここでは、微妙なニュアンスの英語の敬語を解説します。
英語の敬語
「あの方はリンゴを召し上がりました」という敬語の文章を英語にする場合と、「あいつ、リンゴを食ったよ」という敬語ではない文章を英語にする場合と、違う英文になるでしょうか。
どちらもHe ate an apple.ですね。
それを考えると、日本語にたっぷり存在する敬語、丁寧語などが、英語にはないとも言えます。
それでも、Shut the door.を、Shut the door, please.とすれば、丁寧になると思いますよね。 このpleaseさえ付ければ丁寧な敬語になると、まるで万能薬のように見る日本人が多いのです。
しかし、事はそれほど簡単ではありません。
pleaseをつけても敬語にならない?
海外旅行で飛行機に乗り、“Tea or coffee ?”と聞かれて、“Tea”だけでなく “Tea, please.”と答えれば、礼儀正しい敬語と言えます。
では、英米人の家を訪問して、そこで “Which would you like, tea or coffee ? と聞かれた場合でも、“Tea, please.”で礼儀正しいのでしょうか? どうもそうではないようです。飛行機の中というのは、 ひどく忙しい特殊な状況ですから、客とのやり取りも簡略化されています。
その文脈で許容される “Tea, please.”は、普通の状況では不足、不適当です。 “I’d like tea."とか“I think I will have tea."とか、“Tea would be nice.”など、pleaseを使用しない言い方のほうが望ましいのです。
子供っぽいplease
英米の子供に言葉での礼儀作法をしつけるさい、第一歩としてpleaseの使用を教えます。
子供が“Mom, give me ice cream.”と頼んだら、すぐ与えずに、子供が pleaseを補うのを待つのです。こういうしつけが一般的なので、大人が使うと幼稚な印象を与えかねません。
pleaseは、また強い要求をこめる時にも使います。 “Mr。 Brown, come here at once, please.” と言っても、相 手がぐずぐずしていると、“Please come here at once!” とpleaseに強調を置いて、怒鳴るように言います。決して丁寧でなく、「すぐ来てったら」というのと同じです。
もちろん、言い方もありますから、一概にpleaseは敬語ではないと断定しているのではありません。万能でないと知ってほしいのです。
英語の敬語としては、please以外にも、仮定法があるのをしっかりと認識すべきだと思います。
人にものを頼む丁寧な言い方としては、
Could you tell me the way to the post-office ?
Would you tell me the way to the post-office ?
などのように、can、willをcould, wouldと仮定法にすれば適切です。
丁寧、遠慮、あいまいを表す英語の仮定法
I should thinkの敬語
同じように I should think you are a bit careless.というように、thinkをshould thinkにすれば、「思います」 という断定を弱めて「思うのですけど」のようになります。
文脈によって、I should thinkを「思うベき」と訳す場合もありますが、というか、機械的に「思うべき」と訳す人が非常に多いのです。でも現実には、そういう状況は少ないのです。
I should think you are a bit careless.
少し不注意だと思うのですけど。
I should think the teacher is unkind.
あの先生は不親切だと思うけど、どうかな。